「日本の貧困問題の実態と解決、消費者庁が出来るとき」
講師 宇都宮 健児氏(弁護士)
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<要旨>
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1. |
年越し派遣村名誉村長の宇都宮氏を講師に学習
日本社会に衝撃を与えた「年越し派遣村」
貧困問題に取り組む多様な市民団体・労働組合・法律家・学者等の諸個人が集まり反貧困ネットワークを立ち上げ、約1,700人のボランティアで組織。100~200人用のテントに505人が押し寄せた。解雇された労働者には、生活苦や多重債務、住居や所持金も無く、自殺から保護された人もいる。生活保護(集団手続き300人)は最後の手段ではなく唯一の手段。それほどセーフティーネットが脆弱。
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2. |
多重債務問題は貧困問題の現象形態だった
多重債務は低所得者など貧困の象徴。破産原因25%は生活苦・低所得。過酷な取り立てを苦に自殺・夜逃げが増加。ドイツ、フランスにはサラ金は無く銀行が金融も行う等セーフティーネットも強い。70年末日本にはサラ金の規制法が無く、弁護士による相談窓口は3カ月の順番待ち。アメリカ政府や貸金業の抵抗の中、グレーゾーン金利の撤廃は歴史的勝利。
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3. |
日本中に貧困が広がっている
新自由主義による格差の拡大、ホームレスは1.8万人。社会保障費は毎年2,200億円の抑制。国際競争社会に力を入れた結果、非正規雇用者、働く貧困層(ワーキングプア)、貯蓄ゼロ、保険証を持てない、生活保護世帯などが増加。また教育費欠如で子どもが中卒や就労できず貧困が連鎖している。現在、実家や友達も無く一人、将来への展望が持てない「関係の貧困」も特徴。ヨーロッパは職業訓練の間、生活を保障している。
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4. |
貧困問題を解決するための当面の課題
ワーキングプア対策強化(最低賃金、待遇改善、派遣法改正、職業訓練)、セーフティーネットの強化(生活保護制度、貸付充実、公営住宅供給、高等教育無償化)など。
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5. |
反貧困ネットワークの結成と反貧困運動の広がり
反貧困全国キャラバンから、全国各地で反貧困ネットワーク結成の動き。日本弁護士連合会「生活保護問題緊急対策委員会(07)」「貧困と人権に関する委員会(08)」設置。派遣村の取り組みが全国に広がってきている。 |
6. |
反貧困運動の役割とこれから
貧困当事者が声をあげるための支援、支えるための消費者、労働・社会保障運動の連携・連帯が求められている。
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7. |
貧困問題と消費者庁の役割
貧困の問題にメスを入れ、消費者の権利を守ることを最優先にした。地方の消費者行政充実・強化の運動が重要。
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