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第47回埼玉県消費者大会第2回プレ学習会 報告

【日   時】
7月15日(金)10:00~12:00
【場   所】
埼玉会館7B会議室
【参加者】
74人

■テーマ

「そうだったの?TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」

~TPPの正体、その狙いは~

講師:鈴木 宣弘氏

(東京大学大学院農学生命科学研究所教授)

<概  要>

 大震災の復旧・復興の問題と、復興のためにもTPPが必要かという議論も踏まえ、日本の食料・農業、日本社会の再生のための対案を考えたいと思います。

 これまで政府の対応には機動性、即応性、責任ある約束が欠如しています。放射線量をはじめとする重要な情報を国民に知らせず、もし国が間違った方向に行った時の責任は誰がとるのかを、重く見なければ再発は防げないと思います。TPPも農業さえ何とかすれば参加できると、情報が矮小化されています。「輸入に依存してもきっと大丈夫」ではなく、コストをかけても最低限の国内生産を維持しようと認識すべきで、人々が安心してくらせる持続可能な社会には、食料自給も含めて、真に有事に強い国の在り方を考えなければなりません。

 TPPへの参加は、関税だけでなく国内のルール規約も米国と共通になる危険を含んでいます。金融、保険、医療、建築も「内国民待遇」となり、制度基準の低下や廃止を求められ、食品の安全性も失われるでしょう。林業・農産業の崩壊から、領土・国防問題にも発展の恐れがあります。

 TPP参加による利益はごくわずかで、やみくもな拡大の必要はありません。輸出のシェアはGDPの14%。貿易依存度の違いから見て「農業保護VS国益」ではなく、むしろ「輸出産業(経営陣)の利益VS製造業における雇用損失」です。米国の制度により、日本の公的医療制度も崩壊します。TPP参加は全て何でもするというのが前提ですが、コメや野菜などの高関税品目は例外扱いにした方が国益に合い、他国の損失も少ないのです。

 輸入の安い米価と野菜の差額補償をすると、農水省予算の倍が必要です。安い方がいいという消費者の意見もあるでしょうが、「軍事、エネルギー、食料の確保は国家存立の三本柱」で、世界の戦略物資だというのが当たり前です。食料自給率を50%まで引き上げるには、省庁の枠を超え大規模な予算の組み換えがなければ、食料農業政策の再構築は不可能でしょう。

 日本のTPP参加は日中2カ国FTAの利益にも及びません。「東アジアCAP」を構築する等、アジアやEUとの柔軟性あるFTAを促進する方向性が日本には現実的です。どうしたら強い農業になるかを考え、国内生産基盤をフルに活かし、全国的適作適地への誘導、地域の農の「担い手」、新規参入者に対しての支援プログラムの準備が必要です。TPP問題を一つの契機に、持続可能な社会、自らの安全な食の確保について、消費者の皆さん一人ひとりが、早急に議論し、考え直してもらえるようにと願っています。