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会長声明

「テロ等組織犯罪準備罪」いわゆる共謀罪の制定には慎重な対応を求めます

2017年5月17日

埼玉県生活協同組合連合会

会長理事 岩岡宏保

現在、衆議院本会議で審議がおこなわれている「テロ等組織犯罪準備罪」いわゆる共謀罪の審議が、多くの表現者、弁護士会、法律研究者、地方議会の廃案または慎重な審議を求める声、国民の不安を置き去りにし、打ち切られようとしています。「テロ等組織犯罪準備罪」は、日本国憲法が定める「基本的人権」を破壊しかねない危険性を孕んでいるものであり、埼玉県生協連は日本国憲法を尊重し堅持する立場から、国会における慎重な審議を求めるものです。

1. 日本国憲法が定める「基本的人権」を制限する可能性があります

本案では、組織犯罪の計画合意から準備行為に至る場合を処罰要件としていますが、この処罰要件は日本国憲法で保障された思想・良心の自由などの基本的人権を制約する内容となっており、一般市民の不安を増大させています。また、本案で法適用とされた277の対象犯罪は会社法、労働基準法、著作権法などテロとの関係性が曖昧なものや、組織的威力妨害や背任など一般市民が対象となる可能性が排除できない犯罪も含まれています。このままでは、政府の「一般市民は対象にならない」とする説明に対する懸念は払拭できません。

2. テロやオリンピックのためとすることは詭弁です

「テロ対策のための法案」「オリンピックを安全に開催するために必要」と強調しますが、すでに日本では刑法や特別法によって内乱、外患、殺人、ハイジャック、サリン製造等が未遂以前の予備や陰謀の段階で罰することが可能でありテロ行為を陰謀や予備段階で防ぐことが可能です。本案が必要であるとする政府の答弁は詭弁でしかありません。

3. 捜査当局の恣意的な捜査に対する懸念を払拭できません

今年3月、最高裁において警察が令状なしでおこなう捜査に関して一定の歯止めをかける判決が出されたばかりです。しかし、国会答弁ではこの判決がなかったかのように「準備行為」の前でも犯罪の嫌疑があれば令状のいらない一定の任意捜査ができると説明され、令状なしでの監視をすすめようとしています。このままでは、本案導入後、捜査機関による権限が強化され、恣意的な捜査がおこなわれる懸念を払拭することはできません。

4. 戦前に学び、同じ過ちを繰り返さないために

今回の法案では2人以上の計画と準備行為の段階で摘発できます。捜査当局が犯行前の共謀や準備行為を摘発するには、常に国民を疑い監視する社会づくりが必要です。通信傍受や密告が横行し、奨励される社会は自由が奪われた「監視社会」そのものです。戦前、日本は治安維持法の苦い経験をもっています。治安維持法も制定時には「一般の人は対象にならない」とする説明で始まりました。同法が制定された1925年から廃止されるまでの20年間の犠牲者は、逮捕者数10万人、送検された人75,681人、虐殺された人90人、拷問、虐待などによる獄死1,600人余、実刑5,162人にものぼっています。この歴史を絶対に繰り返してはなりません。国会での慎重な審議を求めます。

以上