消費者庁に「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会報告書に関する意見」を提出しました
2019年10月7日
消費者庁消費者制度課
消費者契約法意見募集御担当様
「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会報告書に関する意見」
埼玉県生活協同組合連合会
専務理事 吉川 尚彦
埼玉県の生協では、組合員や職員の地域での見守り活動をはじめ、消費者団体構成員や生協組合員による消費者問題の学習活動、さらに適格消費者団体の一員として「消費者被害防止サポーター」の養成や市町村と連携した活動推進など、安心してくらせる地域社会づくりをすすめています。
消費者契約法の2度にわたる改正及び、平成30年改正案の審議時の衆議院・参議院「消費者問題に関する特別委員会」の付帯決議等の措置について検討されていることに 敬意を表します。そのうえで、消費者契約法改正によって消費者等が制度を利用しやすくなるなど、消費者契約法の2度にわたる改正及び、平成30年改正案の審議時の衆議院・参議院 「消費者問題に関する特別委員会」の付帯決議等の措置について検討意見を申し述べます。
1.いわゆる「つけ込み型」勧誘について
1-1)消費者の判断力に着目した規定を設けることには賛成しますが、「親族等の適当な 第三者が、契約締結に同席するなど一定の関与をした場合には、これを考慮して取消しの可否が決まるような規律を設けることが考えられる。」という点には反対であり、見直しを求めます。また、「消費者の生計に著しい支障を生じさせる契約」の取消しについても、事業者が消費者の財産状況を知っていた場合に限定するべきではありません。
当該契約時における「第三者」の役割・責任が明確でない以上、内容が不当な契約に対して必ずしも「第三者」の関与で契約締結が抑止されるとは言えません。また第三者の関与によって取消しができなくなることは、契約者の保護の観点から防ぐ必要があります。さらに、契約が取消しできなかった場合に、第三者に責任が転換される恐れがあります。独居高齢者が増加し、支援の成り手不足が進行する中で、あるべき姿から逆行する懸念にもつながります。
また、消費者の生計に著しい支障を生じさせる契約を締結しても、事業者が消費者の財産状況を知っていた場合でないと取消しができないというのであれば、著しい支障が実際に発生していても、取消しできない恐れがあります。居住家屋の外見等から事業者が消費者個人の財産状況を推定したとしても、それが正しいとは限らず、把握することは容易ではないことから、財産状況の把握は条件に入れるべきではありません。
1-2)「浅慮」、「幻惑」という心理状態に着目した規定を設けることに賛成ですが、「浅慮」については、検討時間の制限を設けるべきではありません。
報告書では「浅慮」とは本来の意思決定から注意がそれたり思考が狭まったり、思考力が低下した心理状態とされていますが、そのような心理状態は検討時間の制限以外にも、事業者の様々な言動等によって引き起こされ、消費者が本来必要のない契約を交わしてしまうことは十分にあり得ることから、時間の制限以外にも「浅慮」状態となった場合の規律を設けるべきです。
2.「平均的な損害の額」の立証負担の軽減
2-1)平均的な損害の額の立証負担の軽減について、示されている考え方(推定規定、資料を提出する規定、自主ルール策定の促進)について賛成します。加えて、事業者が「平均的な損害」の算定根拠を掲示する義務を負うような制度設計を要望します。
報告書記載の通り、「当該事業者に生ずべき平均的な損害額」は、その事業者に固有する事情であり、立証のために必要な資料は主として事業者が保有していることから、裁判や消費生活相談において、消費者による「平均的な損害の額」の立証は困難です。示されている負担の軽減については賛成しますが、立証責任を事業者とすることが合理的です。事業者が「平均的な損害」の算定根拠を掲示する義務を負うような制度設計を要望します。
3.契約条項の事前開示について
3-1)契約条項の事前開示における努力義務の規定に賛成です。
改正民法で定型約款が定義され、相手方の請求があった場合には条項準備者は定型約款の内容を示さなければならない規定が設けられましたが、これにより請求されなければ 事前に開示する必要がないという誤解が事業者に生ずる恐れがあります。また、この開示請求権を消費者が行使することは期待しがたい現実もあります。こうした状況に対応するために、契約条項の事前開示における努力義務規定を設けることに賛成します。