3.11を忘れない・・
みやぎ生協から被災地・宮城のいまをお伝えします
第63回 2018年11月5日
―復興を担う女性たち―
「自分で選び、自分たちの手で解決する」
石巻復興支援ネットワークやっぺす!
震災は、地元の女性たちが元々感じていた子育てのしづらさや就労の難しさに拍車をかけました。被災による心の傷がそこに加わり、回復をより難しくしました。
「自分の足で立ち上がるには、成功体験を積み、生きがいと仕事を取り戻していかなければ」と石巻復興支援ネットワークやっぺす!(以下やっぺす)の兼子佳恵さんは、震災直後、支援活動に携わるなかで痛切にそう感じました。
2011年5月NPO法人としてスタートしたやっぺすは、内職希望者と企業をつないだり、石巻発のアクセサリーのブランドを立ち上げながら、子育てしながら就労を目指す女性のためのスクールを開講しました。また、復旧・復興とともに変化する地域のニーズにあわせ、女性の起業支援スクール、孤立しがちな母親をサポートするスクール、女性たちの交流・学びの場となるカフェ開設など、数々の女性応援プロジェクトを展開してきました。さらに地元の人たちが趣味特技を活かして自己表現するプロジェクトをつくり、失われた自信を取り戻せるよう支援しました。17年からは貧困家庭やワンオペ育児で大変な思いをしている母親たちのためにママ子ども食堂も実施しています。
活動を始めて7年半。石巻エリアには、やっぺすの支援に背中を押されて自分の道を選んだ女性たちが何人もいます。「女性は、自分の人生なのに他者から“結婚しなさい、子どもを産みなさい”と指図を受けることが多い。でもそれでは楽しくないし、悔いも残る。私はやっぺすの活動から、人生で色々選択を迫られた時に、きちんと自分の判断で選択できる女性を送り出したいと思ったんです」。
それは、やっぺすが当初から掲げていた「主体的に地域づくりに関わる人材育成」という目標にもつながっています。「何年か先と思っていた地域課題が、震災で一気に噴出した。石巻に元々あった課題なのだから、住民が自分たちの手で解決していかないといけない。そのためには人材育成が急務だと思い、取り組んできた」と兼子さんは振り返ります。
18年10月、やっぺすは事務所を移転しました。新事務所には商品展示スペースやイベント・セミナーを開催できる大・小のホールなど様々な機能が集約されています。「つながることで生きがいが生まれ、生きがいが生業になり、生業がきちんとビジネスになっていく。それが循環する拠点にしていきたい」。
石巻の街が住民の手でより良い方へ変わっていく。その担い手を育て、支えていくために、やっぺすの活動は続きます。
※石巻復興支援ネットワークやっぺす! http://yappesu.jp/
▲石巻復興支援ネットワークやっぺす!の皆さん。 後列右端が代表の兼子佳恵(かねこよしえ)さん。 手に持っているカエルのぬいぐるみは、親子で防災を考える取り組みから生まれた「無事かえるリュック」です。 |
前の記事 第62回「縁をつないでいく南三陸町の商店街」(2018年10月5日)